間違いだらけの退行催眠、前世療法

退行催眠とは

退行催眠というのは催眠を用いて記憶を遡って、過去の記憶を思い出す技法のことを指します。 それを用いて有効にセラピーを行うことを退行催眠療法と言いますし、それは催眠療法の中の一つの分野でもあります。

前世療法とは

主に年齢の退行は幼児(まで)ですが、この延長線上で、現在の人生の生まれてくる以前の人生(前世)まで退行して記憶を思い出すことを前世退行と呼び、それを用いたセラピーを前世療法と称します。

従って、前世療法は退行催眠療法の特殊な場合、ということがいえます。

退行催眠を行う意味

セラピーを行う際に、クライアントさんが抱える問題の原因が分からないため、その原因を見極めるべき場合があります。(実際上、原因を見極めるべき場合は決して多くはありませんが。)

催眠療法で退行催眠を行う時というのは主としてこうした時なのです。
(尚、原因が分かったからとって即、問題が解決されるわけではありません。)

間違いだらけの退行催眠とはどのようなものなのかを話す前に、まず、最初に正しい退行催眠の一例を先に見ていくことにいたしましょう。 違いが明確に分かるように。

問題の原因となった場面を退行催眠で蘇らせると、多くの場合、それ(原因)はその時の間違った思い込みだったりします。

記憶が間違っていると言う意味ではなく、その場面で認識した事柄が(客観的に)適切な認識ではなく、どこか歪んだ、間違った思い込み、だということです。そうしたことが原因となって現在の問題が生じている場合が実に多いのです。それを改めることで結果として問題は解決されていくのです。

→ そうした退行催眠の一例

今、ここに示した例では、幼い時に母親から虐待されていたと思っていたクライアントさんが、実際はそれは自分の勘違い、曲解、誤解で、本当はお母さんにそうした意図もなければ、単に当然の事をしていただけだったことが判明した例でした。 本人が思っていた虐待は本当のところ実は、間違った思い込みだったのです。

実のところ誰の場合でも、ほとんどの(やや軽めの)トラウマというものは、こうした間違った思い込みだったりします。 こうしたより広い視点からの状況がわかってくると、通常は、現在の問題においても、そうした何か勘違い、間違った思い込みに心当たりがあるものです。

思い出した記憶は、今まさに過去のその時のその場面にいてその出来事を体験しているかのように生々しく思い出しています。そこに現れてきているのはそのかつての幼いクライアントさんです。思い出しているのはその時の記憶だけではなくて、その時の思いや感情も鮮明に蘇ってきています。 見ているものもその時の目線で見えるものが見えています。

ここで重要なのは、実はそれだけではありません。 実はその時、同時に、現在の大人の自分(クライアントさん)、リクライニングチェアに座ってセラピーを受けている自分の意識もしっかりとあって、普段と変わらず、様々なことを判断しているということです。これはクライアントさんの顕在意識です。(実はセラピストが聞き取れる話というのは、クライアントさんの顕在意識というフィルターを通した話なのです。)

その時(退行催眠時)に働いている意識というのは、その退行した時点での過去の意識と、現在の(大人に成長した)その時よりより客観的な判断ができる意識、その両方の意識なのです。それら両方の意識が同時に働いているのです。 ここに退行催眠の意味があるわけなのです。

つまり、どういうことかと申しますと、退行して思い出した時点での意識よりも、成長した現在の意識が、その、より幼い時の意識を冷静に観ることができている、ということです。

それゆえ、より幼い時の意識の状態を、その時とは異なるより高い意識で観ることができている、ということです。 ここに退行催眠の意義があるのです。 幼いその時に、感じたり思ったりしたことがどういうことなのか、その時そう思ったのは、その時の自分にとっては当然だったとしても、果たして本当にそれは本当のことだったのだろうか、等々が大人の意識で判断できる、ということです。

催眠状態というのは、そもそもそうした普段の顕在意識も働いている状態です。

間違った退行催眠の使い方

ところが世の中では、全く別の目的ではないかと思われるところに退行催眠のようなものが行われていることを、これまで多数のクライアントさん達を通して耳にしてきております。 それには少なからず注意が必要です。

まずその前に、ちゃんとした退行催眠で思い出す記憶にはどういう特徴があるかを見ていくことにしましょう。

退行催眠で思い出す記憶

さて、退行催眠の実際の例を今一度見ていただければ、そこにどういう特徴があるのかが自ずと見えてきます。

  1. まず第一に、思い出した記憶は本人自身の記憶である。
  2. まるで実際にその場面に今(催眠中)いるかのようである。
  3. 思い出した記憶にはよく、普通気に留めないようなことまで含まれている。
  4. 普段覚えていない内容まで思い出す。

退行催眠とは言えない退行催眠(?)

では次に、とても退行催眠とは言えない、まがいものの退行催眠の(仮想)例を見ていきましょう。  上記の退行催眠と顕著に異なる点が数多く発見されるものと思われます。

まがいものの退行催眠にも種類があって、それは大きく二つに分かれます。 一つはセラピスト、というか施術者がある種勝手に場面を設定して、何か記憶めいたことを実際上、押し付けて行くやり方です。 この一例をここに示します。 こういうのは実際上、セラピーではなくて、いいがかり、と普通言うべきものでしょう。 クライアントは実のところ、とりたてて記憶を新たに思い出してるわけでもないことも推測できるかと思います。

二つ目は、一つ目のようには、ある種の記憶の植え付けはさほどないとはいうものの、クライアントさん本人が忘れ去ってる記憶を何一つ思い出すこともなく、本人がとても思い出したくもないような、考えただけでも具合が悪くなりそうな、本人にとっては嫌な出来事をわざわざ思い出させて、しかもその嫌な出来事を蒸し返して味わわせて再体験させるというものです。 その一例を示します

実のところ、世の中で行われている退行催眠と称しているもので非常に多くのものがこの二つの系統のどっちかだったりするようです。こうしたことは、クライアントさん達から直接耳にするわけですが、そこで受けてる時は何の疑問にも感ぜずに、それが退行催眠というものなのだと思って受ける方々は受けてるようなのです。

そして、こうした(本当はまがいものの)退行催眠で、何であろうととても思い出したくもない嫌な出来事を蒸し返されたりすることで、彼ら、彼女らが称するそのトラウマが解放されて問題がそれによって自動的に解決されると思っているようなのです。

もう一度言います。 過去の嫌な出来事を思い出して再体験することで、それにまつわる問題が解放されて解決されると錯覚されてる方がいるのです。 もしかしてあなたにもそんなところはなかったでしょうか??

実のところ、催眠には増幅作用がありますので、もし、催眠中にそんな事を思い出して再体験なんかしていると、それが解放されるどころか逆に、それが大きくなって力を増して襲い掛かって来かねないものなのです。 嫌な出来事がパワーを持って現在のあなたにさらに嫌な思いをさせてくる、そんなことをさせてはあなたに害があるというものです。

でも、たとえ無知だったとしても、あなたが、それをまがいものの第3者に許してしまったとしたら、あなたの責任といえばあなたの責任なのです。 くれぐれも催眠中は基本的には、わざわざ嫌なことは思い出したりはしてはいけません。例外もないわけではありませんが、少なくても、入り口に例外は普通ありません。

重要な点

退行催眠を何故行うかというと、そもそも、今一度述べますが、主には、現在抱えている問題の原因が分からないから行うものなのです。

また、退行催眠で思い出す記憶には必ずあなたは普段は忘れ去ってる記憶が含まれているのがです。

ですので、あなたが日常的に覚えている記憶を思い出す(?)というか、振り返るのは全く何一つ、意味のないことなのです。 そもそもそういうことなら、わざわざ催眠状態にならなくても、普段の状態で行えるわけですし。

ましてや、日常的に頭から離れない思い出したくもない嫌な記憶を、退行催眠のように、振り返ることなど、もってのほかです。

さらに、そうした出来事をそこで味わうなんてことをしたら、尚更、そのことが、まとわりついてくるはめになります。 催眠には実は増幅作用があるからです。

ただでさえ、普段の意識状態で嫌なことなんかわざわざ思い出すのも嫌だというのに、催眠状態で思い出していたら、それが増幅されてしまって、もっと嫌な状態に陥って、かえって苦しむことになるのです。

そもそも、嫌な出来事というのは必ずしも(小さいけど)トラウマというわけではありません。 ましてや覚えていることなら尚更です。 それは、トラウマではなく、嫌な出来事、言葉を変えて言えば、ストレスといいます。

誰にでも嫌な出来事はあります。 それは確かに発散されることなく溜め込んで行けば、いずれは心身の何らかの不調和となって現れてくるのは明らかです。 ですが、催眠中に思い出していては尚更、貯めこまれて行きます、増幅されて。

そうした原因が分かってる時には、そもそも退行催眠は意味をなさないのは実に当たり前のことです。 もともと覚えていることを何故思い出し直さなければならないのか、という事に疑問を持てない方々は、どうやらこの世の中には多そうです。

人間は、とても辛すぎて、それを覚えていてはその方の精神(の器)では本当に生きては行けないような辛すぎる出来事に遭遇したような場合には、その出来事は自動的に(顕在意識から)失われて忘れるものなのです。 それはある種、その方の生命を守る防衛本能、と言えます。

一例をここであげますと、それは、例えば、命に関わりかねないような大きな交通事故などです。 衝突する直前までの記憶はあるんだけど、衝突するその瞬間から病院で意識が戻るまでの間の記憶がすべて飛んでしまっていて思い出すことができない、なんていう人の話を、あなたも聞いたことがあるかもしれません。 それはつまり、もし覚えていれば、とても辛すぎて耐えられないので、潜在意識がそんな辛い想いで死なせないようにわざわざ忘れさせてくれているわけなのです。 辛すぎてとても耐えられないことには、そうした防衛本能が働いていて、忘れさせてくれているものなのです。

そうしたせっかくの防衛本能を打ち壊すように、わざわざ記憶から飛んで行った、とても辛すぎて今の精神の器では耐えられないような記憶を無理やりに思い出させてはいけないのです。それはわざわざ守ってくれるために記憶から飛んだことなのですから。 もっとも、通常はそうしたことは、いくら退行催眠をやったとしても、潜在意識が思い出させてくれることはないものです。

そうした場合、無理にこじ開けてはいけません。時期ではないからです。

今、時期ではない、と言いましたが、それでは、いつが時期なのでしょうか??
そうした場合は、今ではありませんし、10年後でもないかもしれませんし、40年後でもないかもしれません。 そんなこと言っていては死んでしまうよ、とおっしゃるかもしれませんが、そうだとするならば、今の人生ではその時期はない、というだけのことです。おそらくは、もっと先の人生の中で思い出すべき時期が訪れることでしょう。 その時がタイミングというものです。 今ではありません。

それどころか、そもそもどこにもそんなタイミングなんてそもそもないかもしれませんし、それ以前に、全く必要がない場合がほとんどだと言えるでしょう。

辛い出来事が好きな人が仮にいるとするならば、その人に関しては、わざわざ自分自身のその辛い出来事を思い出してあぶり出しても本人が好きでやってる以上、無害かもしれませんが、もしあなたがそういうタイプの人でない場合ならば、そういうことはやめましょう。

ただし、そうは言っても、注意というか、留意しておかなければならない点があります。 これはとても重要です。

退行催眠の本来の意味である、「現在の問題の(判明できていない)原因を調べる」場合に関してです。

この場合、確かに、思い出した記憶というものは辛い記憶である場合は多いものです。 それはそうですよね、問題の原因なのですから。

ですが、それはわざわざその辛い場面を思い出させるように誘導して思い出した記憶ではありません。

この違い、判りますね?

問題の原因を探っていって思い出した記憶が、(たまたま偶然)辛い出来事の記憶だった、というのと、わざわざ辛い出来事を思い出させた記憶とでは、その中身がたとえ同じだったとしても、意味が全然違うのです。

退行催眠の本来の意味である、「現在の問題の(判明できていない)原因を調べる」場合に思い出した記憶というのは、普通、その記憶の中に何かその原因が含まれているものです。 それは無視したり避けていてはいけません。たとえ少々辛くても、です。

無理にこじ開けてるわけでもないのに、記憶が出てくるということは、ある意味、その記憶を思い出したからと言ってあなたが別に死んだり重篤な状態に陥るわけではない、ということです。

そしてじっくりと見ればその瞬間、別にあれこれ何か考えなくても、普通は直感的に原因となってるものが見えてきたり、その糸口が分かってくるものです。あなたが心を閉ざさなければ、ですが。 見えてきたものが具合が悪いからと言って拒絶してしまうと、せっかく出てきかかったものも、引っ込んで行ってしまって、自分で解決の糸口を摘んでしまうことになります。

普通は、退行催眠で思い出す記憶は幼少期の記憶です。 ですが、それを見ている現在のあなたは、通常は成長した大人です。 したがって、普通は、その大人の意識で難なく、問題の原因は冷静に客観的に観ることができるものです。

それ故、幼少期への退行催眠の場合は、その当時の本人の意識ではまったく気が付かなかったことも浮かび上がって、それを冷静に今の大人の成長した意識で観ることができるのです。

もう一度言います。 思い出した記憶よりも成長した意識が見ているため、そこに原因解明への手掛かりがあるのです。

では、前世退行の場合はどうでしょうか??

思い出した記憶に出てくるあなた「も」たいてい大人のあなたです。 現在のあなたの方がその時点でのあなたよりも成長しているとは限りません。 そこに思い出した記憶を必ずしも冷静に客観的に観れないかもしれない難しさがあるわけです。 ましてや、見たくもないものなら、それを知らず知らずに遮断してしまう可能性さえ高くなってしまうわけです。

その点が幼児期への退行と異なる点です。 その点が前世療法がセラピーの手段として幼児期への退行と比べて、より適してはいない点なのです。

ただ、いずれにしても、幼児退行にしろ前世退行にしろ、退行催眠は適切にセラピーに用いることはできはします。 ですが特に前世退行の場合、セラピーに結びつかない場合もあります。

その他、注意点

また、これはよくありがちかもしれませんが、記憶を思い出すわけでなく、妄想めいたもので記憶を生み出す、というかでっち上げる方々もいるようです。 と申しますか、そういう人はたいてい、セラピストがある意味無理やり想像させて作らせてる場合が多いように思います。

そうしたでっち上げの記憶と本当に思い出した記憶との見分け方は簡単で、本当の記憶の場合なら、それがまさしく自分本人だ、という意識が直感的にある点です。 もしそうした感じはなくて、自分で何か作ってる感じがすれば、それはたいていは想像ででっち上げさせられたニセの記憶です。