潜在意識と顕在意識

二つの意識

我々人間の意識とは、脳のことではありません。この意識には、顕在意識と潜在意識の二つの側面があります。意識全体の10%以下が顕在意識で残りの大部分が潜在意識で、人間はこの顕在意識しか意識的には使えていないと言われてます。

よく左脳が顕在意識、右脳が潜在意識を掌っていると思われがちですが、どちらの意識も「脳」のような体の一部、「物」というわけではありません。 左右の脳はほぼ同じ大きさです。

顕在意識は、自覚があって気がついていて、感覚器官を通して情報を集め、判断し、決定します。

一方、潜在意識は、気がつかなくても存在している事柄や機能を管理してます。 (顕在意識が)忘れ去った過去の記憶だったり、(ある特定のその人個人の)感覚や状態、それに、体の呼吸や心臓の鼓動、消化や吸収等々です。独自の判断をすることはありませんが、パワーは(顕在意識の)意志の力をはるかに上回ると言われてます。

あなたはこれを聞いてひょっとして、ではどっちの意識が本当の自分なんだ? と思われたかもしれませんね。

そう思われなかった人も多いかもしれませんが、強いて言うならば、それは、顕在意識かもしれません。

こう言うと、抵抗を感じる方も多いかもしれません。
そう、ほんとうは、どっちの意識も本当のあなたの意識だからです。

とは言うものの、あなたの潜在意識はあなたの潜在意識自身によっても顕在意識によっても認識されることなく働いています。誰だって自分で食べたものを消化してると自覚しながら消化してる人はいませんし、意識的に普段呼吸してる人は、普通いませんし、誰も心臓を鼓動させようとして動かしているわけではありません。髪や爪は何も意識してなくても勝手に伸びていきます。

こうしたことは、知らないところで何も考えたりする必要なく自動的に働いているものです。

一方、あなたの顕在意識は、あなたの潜在意識によっては認識されてないかもしれませんが、あなたの顕在意識それ自身によってしっかりと認識されています。

それ故、認識としては、あなたの顕在意識こそが、あなたの主たる意識だと思われやすいでしょう。

あなたが意識的にコントロールできるのは、あなたの顕在意識です。

ところで先ほども言いましたが、あなたの潜在意識にはあなたの記憶やある特定の状態といったあなた固有の事柄だけじゃなく、人間や動物共通の事柄までもが保存されています。 心臓の鼓動や、胃腸での消化吸収、髪の毛の成長、呼吸等々です。

そうした意味ではそれら全てを潜在意識と一言でくくってしまうには随分と荒いくくりと言えるかもしれません。 ですので、今ここでは、このサイトでは、潜在意識をあなた個人にかかわる「潜在意識」とその範囲を超えた「無意識」とに分けて話を進めることにします。

つまり、無意識とは心臓の鼓動や消化吸収、爪や髪の毛の伸び、といった意識的には普通コントロールできない部分の意識で、これはあなただけではなくて、誰でも一様に遺伝子レベルで持ち合わせているような意識です。

催眠状態といえども、この領域の意識、つまり無意識に働きかけることは通常できませんし、仮にできたとしても無意識はその時点でシャットアウトしてくるでしょう。

それは生命が生きる上での根幹だからです。

そしてセラピーでそうした人間が誰でも本来共通に持ち合わせているところに何か変化を与えることは通常、意味をなしません。 あなた個人が抱える問題は動物全体とか人類全体が抱える問題、というわけではないからです。

それに比べて潜在意識とは、人間すべてに共通というよりは、どちらかというと、人間個人個人によって異なる〈顕在)意識では認識できない状態、意識です。例えばあなたの食習慣とか何か特定の調子の良い状態や不調和な状態、過去の〈顕在意識が忘れ去ってる)記憶、などです。

人間の日常的な行動や振る舞い、思考等は知らず知らずのうちに潜在意識に刻み込まれて行きます。 そして今度は、潜在意識に刻み込まれたものが日常の振る舞い、行動や思考となって現れてきます。

人はこの潜在意識に刻み込まれたものが、自分自身とも周囲とも調和していると健全で、不調和を起こしていると、何か問題を抱え込みます。

いや、実はこの表現は少々、誇張にすぎるきらいがあります。 というのは、(あなたの)潜在意識にはあなたのこれまで経験したすべての状態が保存されている(と言われている)からです。

つまり、あなたの潜在意識には、あなたが自分自身とも周囲とも調和している状態も保存されていますし、それだけには留まらず、あなたの不健全な状態だって保存されているのです。 あなたの潜在意識にはそのどっちもがあるのです。

そこで、ポイントとなる点は、あなたの潜在意識の中には、潜在下に潜んで顕現していない部分と、それに、それとは別に、顕現している部分の両方がある、ということです。

もう一度言います。あなたの潜在意識の全てが顕在化してるわけではないのです。

そこで、先ほどの表現を言い直しますが、顕在化されてるあなたの潜在意識が自分自身とも周囲とも調和していると健全で、不調和を起こしていると、何か問題を抱え込みます

つまり、あなたにとって必要なことは、調和しない潜在意識には引っ込んでいてもらって、ほんとうに潜在下に潜んでいてもらって、調和する意識を顕在化させてこの世に表出させること、だということが言えるわけです。

一応念のために一言ここで挟んで置きますが、これは何も、あなたに、周りとの調和をとるために、何かをがまんしたり、耐え忍んだり、良い人でいなければならない、などというようなことでは全然ありません。

もう一度言います。あなたの潜在意識には相反する状態だって保存されている可能性があります。

それが別にあなたに問題を引き起こしているわけではありません。 それ自体が問題だというわけではないのです。

問題は、自分(の心身)や周囲と不調和をもたらす(反応パターンなどの)状態が顕在化してることが問題となっているのです。

そして、(多くの場合には、)あなたの潜在意識には同時に、自分(の心身)や周囲と調和をもたらす(反応パターンなどの)状態もあるものです。

たとえば、今はうつ状態で体が重くて何もできない状態が顕在化してしまってる人でも、以前は、体も決して重くはなく、普通に生活も仕事もできていた、なんていう人はむしろ普通にいる、というか、ほとんどの人は以前は普通だったはずです。

そしてその時の状態というのは、今もなお、各自の潜在意識の中にちゃんとしっかり保存されているのです。

あなたが今、パニック障害とかで、電車に乗るとパニック発作を起こすとか、あるいは、必ずしもパニック発作を起こすとは限らないにしても、不安感にさいなまれて、とても落ち着いてはいられないような心身の反応パターンを示している状態だったとしても、以前のあなたは、普通に電車に乗れていたはずです。

そうしたあなたも、以前の普通に電車に乗れていた心身の反応パターンも潜在意識には決して消滅してなくなってしまってるわけではなくて、今もなお、以前同様に、潜在意識に保存されているのです。 その健全なパターンが。

ただ、今顕在化してるのは電車に乗るとパニック発作を起こすとか、不安で仕方ないといった不健全なパターンだというだけで。

つまり、以上のような、不健全なパターンには潜在下に潜んで隠れていてもらって、健全なパターンを顕在化させれば良いわけなのです。決して潜在意識を書き換えることが解決というわけではないのです。

それを行うのが催眠療法なのです。

催眠療法とはよく、潜在意識を(表面の意識の都合の良いように)書き換えることによって願望を実現する即効性のある療法だ、なんて思われている方々がいたりします。

また、その一方では、潜在意識を書き換えるなんてどうやったらできるの?? それは変だよ、そんなことができるとされている催眠療法ってやっぱりオカルトじゃないですか、等々ある意味ちょっと冷静に観ておられる方々もいらっしゃるかもしれません。

ですが、どちらもちょっと筋を外してしまってるようです。

というのは、この表現、「潜在意識を書き換える」とはあまりにも乱暴な表現だったからなのです。

催眠療法では極論を言うと、もともと持っているものしか顕現させることはできないからなのです。 初めから持っていないものならば、ものによってそれ相応の年月がかかるものだって当然あるわけなのです。

もっともその場合でも、それ相応の年月とは言っても、通常かかるはずの年月よりもずっと短縮することはできるにしても、本来の催眠療法の特徴である即効性を感じることはないでしょう。

もともと持ってはいないものを、速攻で顕現させることなんて、催眠療法でも、魔法ではありませんので、こればかりはできません。

潜在意識は催眠療法にとって間違いなく有用なものなのですが、それは決して、潜在意識を書き換えることで問題が解決されるというわけではない、ということです。

潜在意識の中からあなたにとって調和する現実(だけ)を顕在化させることが肝だということなのです。

もっとも、催眠療法はそこにとどまるわけではありません。 ですが、まず、第一のフェイズは、それだということです。 それ以上はその後のフェイズだということです。

こうして見てきて、今ちょっと振り返りましょう。

人間の日常的な行動や振る舞い、思考等は知らず知らずのうちに潜在意識に刻み込まれて行きます。 そして今度は、潜在意識に刻み込まれたものが日常の振る舞い、行動や思考となって現れてきます。

あなたの望まない心身の反応パターンは、それを2度、3度と繰り返すことによって潜在意識に刻み込まれて行き、それが起きやすくなって、少しづつ習慣化しはじめます。

しかしながら、人間には回復力がありますので、まだ、2,3回程度なら、元の健全な状態に自然に戻る場合も多々あるものです。ストレスに強い人はこの回復力は強いでしょう。 (我慢することでは決してないですよ。我慢することが良いわけではありません。)

ですが、それが何度か、さらに何度も繰り返されていると、その状態はいよいよ潜在意識に徐々に深く刻み込まれてはじめ、それがあるレベルを超えると今度は、その(繰り返される)状態を保つ力が備わってきます。

さらに進むと、それが当たり前のこととなって定着してしまいます。 そうなるともう、そこからは抜け出せなくなって行きます。 心身の不調和は定着し、それがあなたの日常になってしまいます。

こうなってしまうともう、本人の力ではどうにもならなくなったように思えます。

ですが、これは決して不可逆的な現象ではなくて、可逆的な現象なのです。

なぜならば、潜在意識にはあなたの以前の健全な状態が保存されているからです。 それは決して失われてしまったわけではないからです。

その状態を再び顕在化させることができるのが、きちんとした催眠療法家が行う催眠療法というわけです。

今、可逆的な現象のゆえ、元の状態に戻すことができると言いました。 ですが、それをいつまでも可能、と捉えるのは拡大解釈に過ぎます。 いえ、別に時効というものが存在するという意味でもありませんが、人間は、長く続くものは、その状態は習慣化して定着して行きます。 その定着の度合いが、ある臨界点を超えてしまうと、それはもう、不可逆的なものになってしまいます。

催眠療法といえども、不可逆的な領域に入ってしまうと、もうどうすることもできません。(作用することはありません。)

ここまで行かなくても、少々定着してしまった程度では、まだ可逆的な領域ですから、元の状態に戻すことはできるのです。

とは言え、いったん定着したものは、その状態から別の状態に移ったとしても、放っておけば、自動的に戻ってしまうものです。 私はそれを、習慣の力、と呼んでいます。

ですので、せっかく元に戻したかつての良い状態は、今度はその状態にしっかり定着し直しておく必要があるのです。 これを行わないと、いつの間にかもとの状態に知らず知らずのうちに戻ってしまって、催眠療法を受ける前の心身の不調和の状態に戻ってしまって、それが再定着化してしまいます。

そうならないように、ポジティブフィードバックがかかるまでしっかり、せっかく取り戻したかつての健全な状態を根付かせる必要があるのです。

それまでの期間というのは、どうしても黙って放っておいたらいつの間にかちょっと前までの心身の不調和な状態へと自然と戻って行ってしまうものです。 それはある程度やむを得ないことです。 何しろ、取り戻したかつての健全な状態はまだ根付いているわけではないからです。 それは決して催眠の有効時間とかいうことではありません。 しっかり根付いてしまえば、もうセッションは必要なく、半永久的にかつての健全な状態で過ごしてるようになっているものなのです。