催眠ショー(見世物としての催眠)との違い

エンターテインメントとして、何かのショーの舞台とか、テレビなんかで、見せ物としての催眠術、催眠ショーを見たことがある方もきっと多いに違いありません。

と言いますか、まず、ほとんどの人たちは、催眠と聞いてまず第一に頭に浮かぶのは、そうした、催眠ショーではないでしょうか。

つまり、催眠にかかっている人が、普通とは思えない何かおかしなことをして、客席のお客さんがそれを面白おかしく見ているといった見せ物のことです。

それは催眠療法で用いる「催眠」と同じ「字」で書かれてはいますので、このページで触れておくことにします。

では、彼ら催眠術師が使う催眠とは、果たしてどのような類の催眠なのでしょうか? それは、今ここで私が扱っている催眠療法に用いる催眠と全く同じものなのでしょうか? それとも、全く異なる別物なのでしょうか? それとも、何らかの共通するところはあるものなのでしょうか? このページでは、そうした観点から、催眠ショーで用いられる催眠に関してちょっとだけ触れてみることにします。

催眠ショーのトリック

 

催眠ショーなんかで観客を楽しませる催眠術師は言うまでもなく催眠療法士とは異なります。彼らは何かの療法士でもなんでもなく、エンターテイナーなのですから。そこを混同してはいけません。

彼らの仕事は観客を楽しませることで、その目的で催眠を使いはしてるだけなのです。もちろんその使う催眠の作用も催眠療法士の行うものとは全く異なります。

彼らはお客さんの中から、とりわけ催眠にかかり易い人をわざわざ選んで、彼らに催眠をかけ、あたかもほんとうに操っているかのように見せかけることで笑いをとっている芸人さんなのです。 この、あたかもほんとうに操ってるかのように見せかけることがショーの所以(ゆえん)なのです。

そのためにわざわざそれに相応しい人を観客の中から選んでいるわけです。 選ばれた観客も、決していやいや舞台に上がって行ってるわけではなくて、自ら好んで舞台に上がって行ってるのもお分かりでしょう。(そもそもそういう方が選ばれてるわけですから。) そこはショーの舞台なのです。 決してあなたが受けたい催眠療法をやってる舞台ではありません。

催眠ショーというのはお客さんがそれを見て、面白おかしく楽しむ場です。
その舞台に上がって行くというのは、自分がその笑いの対象になることをステージに上がる前から分かっているということです。その上でステージに上がっているということです。
ですから、面白おかしいことを何ら嫌がることなく指示通りできるわけです。

彼らとて決して操られているわけではなくて、実は自らの意思でやってるに過ぎなかったわけです。
そういう人がそもそも選ばれているわけなんですから。 ここが催眠ショーの種も仕掛けもあるトリックのミソでした。

そうしたトリックがある奇術がお客さんを楽しませる催眠術師が行う催眠ショーの実態だったわけです。(見世物ですので当たり前といえば当たり前ですが。) そして、催眠療法はこうした奇術師の見せかけ催眠テクニックの延長線上にあるわけでは決してありません。ここを勘違いしてはいけません。

ですが、世の中には催眠術師が行うそうした奇術のように、操られることで自分の抱える問題を安易に解決したいと考えている依存心の高い方々も少なからずいるのも事実かもしれません。

よく、催眠では運動支配や感覚や感情の支配、それに記憶の支配ができると錯覚されている方が数多くいるようです。 というのも、セラピストとしてしばしば、嫌な記憶を消したい、といった相談も受けるからです。

確かにそうした方がたならば、受けるべきは催眠療法ではなくて、催眠術を催眠療法士からではなくて、催眠術師から受けたほうが、バランスは取れている、ということは言えるかもしれません。 きっとそこで何かは起きるでしょうから。 ただし、結果がどうなろうと、それは自己責任というものですが。

また、彼ら催眠術師も決して、ショーで怪我をさせたり人に害を及ぼすような暗示は何一つ与えていないこともお分かりかと思います。 そんなことをもし、万一してもショーを自分自らがぶち壊してしまうだけですし、仮にそうした暗示を与えても、その場で催眠は実は解けてしまうからです。

万が一にも実際にそうした危険な行動を行った場合、それは、その人(催眠にかかってる人)にその意思があった場合のみなのです。 催眠状態というのはそもそもそうした状態なのです。

彼ら催眠術師の催眠が決してウソだとは敢えては言いませんが、彼らは人をわざわざ選んでかけているのです。 それに対して、催眠療法を行うに当たっては、クライアントさんを選ぶということは通常できないことです。この点が対象とする相手に関する最大の違いです。

催眠術師の仕事の成否は、催眠にかかりやすい人をいかに的確に選ぶかにかかっているといって過言ではありません。

そして、あの種の催眠はインパクトの強さとは対照的に、その時だけで何もかもすべてが終わるものです。一般にあの種の催眠が作用している時間には持続時間というものがあって、だいたい10分とか15分です。

つまり、いくらインパクトがその時は強かったとしても、何も改善されるようなことはない、と言えます。 セラピー的な意味で、潜在意識にしっかり的確に作用してるわけでは決してないので当たり前と言えば当たり前のことです。

こう言うと、中には、「催眠ショーでの、あのインパクトのある催眠術は、行動支配のレベルでの催眠深度なんですよ。 たとえインパクトはあっても催眠療法みたく、確かに何かを解決してくれるわけではないのは明らかです。 でも、そうは言っても、彼ら催眠術師だって、もっと踏み込んで、感覚や感情の支配までの深度で催眠術をかけることができるそうですよ。 ですので、そこまで催眠深度が深くなれば、物事を解決させる力も出てくるのではないですか?」という質問が飛んで来そうです。

世の中の人々は未だに、催眠というものは、そのように、人の行動や感覚や感情、さらには記憶までをも支配するものだと思われているようです。
ですが、そもそも催眠(状態)というものは、そうした人を操ったり、人の何かを支配したりできる状態では決してありません。

先ほどから述べてきてますが、催眠ショーというものは人を楽しませるショーなのですから、そのような点で人の関心を引き付けて、何か面白おかしいことをする必要があるわけなのです。

彼ら催眠術師は彼らのショーマンとしての仕事を成功させるために、そのように見せかける必要があるというだけなのです。 それは、繰り返しますが、トリックを用いた奇術なのです。 そこを勘違いしてはいけません。

 

催眠という技法は様々あるわけですが、このように、催眠療法というセラピーに用いられるだけではなく、催眠ショーのような見世物、エンターテインメントにも用いられ得る要素を持つもの、ということが言えると思います。 このことからもお分かりかと思いますが、催眠それ自体にセラピーの要素があるというわけでもなんでもないんです。

世の中には催眠技法を覚えれば、その延長線上で催眠療法もできるようになると何か錯覚されている方々が数多くいるように見受けられますが、それは誤りであることに少しは気づいていただけましたでしょうか??

ましてや、催眠術師が用いる催眠術の延長戦にあるものには何らセラピー的な要素のあるものは期待できませんし、世の中にある、すぐにマスターできる催眠術や催眠療法には、セラピーで使える催眠技法は全くなに一つない、と思ってよいでしょう。

そういう姿勢で覚えられる催眠技法というものは、単に催眠術師が催眠ショーで行う技法だと思った方がよいでしょう。 行動支配とか感覚支配とか感情支配とか記憶支配とかという言葉が出てくれば、尚更です。

(実際、本格的な催眠療法に必要とされる催眠誘導をマスターするのは、誰でも簡単にできるものではありませんし、訓練の積み重ねが必要です。 それは人を選ぶことができる催眠ショーでの催眠とは単に催眠という点では同じかもしれませんが、本質的な点で異なります。)

そもそも催眠状態では、行動支配とか感覚支配とか感情支配とか記憶支配などということはできないことを思い出されてください。 それは、そう見せかけたトリックなのです。

 

さて、催眠療法士が行う催眠療法は、催眠術師が行う催眠ショーとは違って、人を選ぶということが通常、できません。 催眠にかかりやすい人を選んでいたのでは仕事になりません。

もちろん、催眠にはかかりやすい人もいれば、かかり難い人もいれば、それは別として実のところ、そもそも催眠に入るつもりがない人も稀にはいます。

いくら催眠療法士がクライアントさんを選ぶようなことは普通できない、とは言っても、だからと言って、どんな人でも確実に催眠状態に入れれるというわけではありませんし、そうした絶対確実な技法がどこかに隠されてあるというわけでもありません。

そもそも催眠にかかるつもりがない人を催眠に入れることなんて、誰がやってもできることではありません。 それは催眠の一つの大きな特徴でもあります。

そもそも催眠にかかるつもりがない人が催眠療法を受けること自体、それは冷やかし、と言いますし、クレーマー気質の人に多くみられます。

ですので、必ずどんな人でも催眠状態に誘導してセラピーができるというわけではありません。 クレーマーのように極端な人を別としても、これは水素と酸素を化合させれば必ず水しかできなく、決して二酸化炭素ができてくるわけではない、といったような化学反応とは異なるからです。

人間のような生体には確かに大筋では全員同一の反応を引き起こす現象もあるものの、必ずしも全個体、極端な場合を除いても同一の反応を示すとは限らない側面もあるものです。ましてや、感情等、各個人個人すべて異なってるものですから尚更です。

ただ、催眠ショーを行う催眠術師が行う催眠には、人を選んでかけることができるわけですから、こうした要素が介入してくる余地はないのです。

彼ら催眠術師の仕事の成否のすべては、ショーで、彼らの催眠にちゃんとかかってくれる人を選び出すことにかかっているわけなのです。

そして、催眠療法を行う催眠療法家には、そもそもそんな選択肢ははじめから存在しないということです。

これが根本的な違いなのです。

それでは、催眠術師でも、受け手を選べば催眠療法ができるということでしょうか??

それは、本来、問題とは言えないような問題(何とは敢えて言いませんが、)を解決するような場合には、あり得ないことではないでしょう。 言い方によっては、問題によっては解決できるものもある、という表現はあるいはできるかもしれません。

もちろん、どんな催眠療法家でも、すべての問題を解決できる人はいませんので、その区別はつかないといえば、つけようはない、と言えるかもしれませんが。

逆に言うならば、催眠療法士とされる方の場合でも、その施術分野が限定されていたり、成果が現れない場合が多いとなると、やっている施術内容は、催眠ショーをやる催眠術師のレベルと基本的には何ら変わりがない、ということが言えることになります。

とくに、催眠の効果には有効期間とかというものがあって、その期間が過ぎる前に催眠療法を受け続けていかなければ効果は持続しない、とか説く人や、たとえば、大勢の人前で話をしなければならないとか、ある急場を凌ぐ一瞬だけ有効な催眠なんかをするような人などは、実際には催眠術師でしかないと思ったほうが良いでしょう。

このあたり、受ける方は注意されたほうが良いでしょう。